ページ

6/15/2011

キセキ。

どうも、近藤です。
松坂世代です。

昼下がり、映画「奇跡」を観て来た。
大好きな是枝裕和監督の最新作。

全線開業した九州新幹線の一番列車がすれ違う瞬間、奇跡が起きる・・・
離れて暮らす家族の絆を取り戻すために動き出した、子供たちの成長の物語。


少年少女たちのとある冒険は、名作「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせ、
主人公を演じたお笑いコンビ「まえだまえだ」の自然さも、
それを引き出した監督の演出ももちろん素晴らしかったが、
そんなことはすぐに意識の外に行ってしまうほど、素直に映画にのめり込める作品だった。


子供たちの日常に、どれほどの感情の彩りがあるのか、
それがいかに素敵なことなのか、豊かなことなのか、清々しく感動できた2時間。
これまでに観た邦画の中で一番好きかも。
ちなみに今まで一番だったのは、同じ是枝監督の「誰も知らない」。
7年ぶりに好き度1位の記録を塗り替えた。

ラストシーンに向かうにつれ、私には、スクリーンの中の子供たちの姿が、
色とりどりの「ビー玉」のように見えて仕方なかった。
世界に起きる様々な出来事を、まわりの人たちを、刻々とやりとりする気持ちを
クリアに映し込みながら、どこまでも、どこまでも、ころころ転がって行く「ビー玉」。
赤や青、きいろやピンクに水色のビー玉が、光を浴びてキラキラ輝くように。
子供の頃、転がるビー玉を追いかけて遊んだ、懐かしい記憶が蘇った。
そうだ、どこか、郷愁に似た匂いが満ち満ちている感じ。
それがこの映画の根幹にある気がした。

10歳から12歳ころ。
日々をカラフルに描いていたあの頃の自分とリンクして、
切なくなったり、笑ったりの連続。
気付けば、ビー玉みたいな小さな涙がこぼれた。
「子供の成長」は目に見える幸せ。
この世で何よりも守っていかなければならないものだと、しみじみ想った。

映画「奇跡」のモチーフとなった九州新幹線が全線開業したのは、今年の3月12日・・・。
当たり前だと思っていたことが一瞬にして奪われた、あの大震災の翌日だ。
不思議なつながりを感じずにはいられない。
きっと当たり前のことの中に、奇跡はたくさんあるのだろう。

今ある奇跡を慈しむこと。
それって、なかなかできないけれど、忘れたくないな。

有楽町の、古くて小さな映画館。
働く人たち一人一人の、誠実で丁寧な仕事ぶりも印象的で、
外に出たら、爽やかな風がすーーっと心に吹いた。