松坂世代です。
昼下がり、映画「奇跡」を観て来た。
大好きな是枝裕和監督の最新作。
全線開業した九州新幹線の一番列車がすれ違う瞬間、奇跡が起きる・・・
離れて暮らす家族の絆を取り戻すために動き出した、子供たちの成長の物語。
少年少女たちのとある冒険は、名作「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせ、
主人公を演じたお笑いコンビ「まえだまえだ」の自然さも、
それを引き出した監督の演出ももちろん素晴らしかったが、
そんなことはすぐに意識の外に行ってしまうほど、素直に映画にのめり込める作品だった。
子供たちの日常に、どれほどの感情の彩りがあるのか、
それがいかに素敵なことなのか、豊かなことなのか、清々しく感動できた2時間。
これまでに観た邦画の中で一番好きかも。
ちなみに今まで一番だったのは、同じ是枝監督の「誰も知らない」。
7年ぶりに好き度1位の記録を塗り替えた。
ラストシーンに向かうにつれ、私には、スクリーンの中の子供たちの姿が、
色とりどりの「ビー玉」のように見えて仕方なかった。
世界に起きる様々な出来事を、まわりの人たちを、刻々とやりとりする気持ちを
クリアに映し込みながら、どこまでも、どこまでも、ころころ転がって行く「ビー玉」。
赤や青、きいろやピンクに水色のビー玉が、光を浴びてキラキラ輝くように。
子供の頃、転がるビー玉を追いかけて遊んだ、懐かしい記憶が蘇った。
そうだ、どこか、郷愁に似た匂いが満ち満ちている感じ。
それがこの映画の根幹にある気がした。
10歳から12歳ころ。
日々をカラフルに描いていたあの頃の自分とリンクして、
切なくなったり、笑ったりの連続。
気付けば、ビー玉みたいな小さな涙がこぼれた。
「子供の成長」は目に見える幸せ。
この世で何よりも守っていかなければならないものだと、しみじみ想った。
映画「奇跡」のモチーフとなった九州新幹線が全線開業したのは、今年の3月12日・・・。
当たり前だと思っていたことが一瞬にして奪われた、あの大震災の翌日だ。
不思議なつながりを感じずにはいられない。
きっと当たり前のことの中に、奇跡はたくさんあるのだろう。
今ある奇跡を慈しむこと。
それって、なかなかできないけれど、忘れたくないな。
有楽町の、古くて小さな映画館。
働く人たち一人一人の、誠実で丁寧な仕事ぶりも印象的で、
外に出たら、爽やかな風がすーーっと心に吹いた。