子どもが生まれてから、
仕事以外の日はずっと息子といっしょなので。
映画館で映画を観る機会はめっきり減ったけれど。
子どもがいるからこそ、
親だって、
ひとりの人間として、
心動かされる体験が必要ではないかと。
どうしても観たい映画は観に行こう!
と決めた、きょうこの頃。
公開された6月中に観ることができた、
2本の映画。
カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドール受賞作『万引き家族』と、
ベストセラー小説を原作としたハリウッド映画の話題作『ワンダー 君は太陽』。
後者は何度泣いたかわからないくらい、
終始涙腺がゆるんでいた。
前者は一度だけ涙。
何気ないシーンだったけれど。
このブログには、
絵本にまつわる場面のあった、
『万引き家族』について書きます。
(映画の内容にふれていますので、ご注意ください)
*
是枝監督の作品は昔から好きで、
ほぼすべての映画を鑑賞。
自分のいまの価値観に大きな影響を与えてくれたという意味で、
今作をこのタイミングで観ることができて、
本当によかったと思う。
劇中で祥太が、
レオ・レオニの名作絵本、
『スイミー』を朗読するひとこまのあったことが、
とても印象的だった。
母親の大好きな絵本で、
よく読んでもらっていた1冊でもあるのでなおさら。
(厳密に言えば、
祥太は国語の教科書に載っている『スイミー』を読んでいた)
是枝監督は本作で、
親から虐待を受けた子どもが生活する施設を取材したそう。
そのとき、学校帰りの小学生の女の子が、
教科書に載っている『スイミー』を読んでくれた。
その子の顔が忘れられず、
「ひとりの少女に向けて作った」とも語っている。
*
物語の核となるのは、
大きな魚を追い出すために、
小さな魚たちが協力して、
大きな魚に擬態するというシーン。
是枝監督が、
『スイミー』を通して暗示したかったことがあるような気がして、
ずっと考えている。
柴田家の人たちも、
小さな魚たちのように寄り集まっていた。
彼らは一体何に立ち向かっていたのだろう。
伝統的な家族主義や母性信仰。
そうした現代社会の通念だとしたら。
わたしの中にも、
無意識に底流していたものだと思う。
自分が母親になったことで、
より強くなっていたかもしれない。
*
「血の繋がりが全てではない」
「家族ってなんだろう」
血の繋がりがあるからといって、
愛せるとは限らないし、
愛されるとも限らない。
映画公開と同じ時期に報道された、
実の家族内で起こった痛ましい事件が頭をよぎったのも、
より深く感じ入った要因のひとつ。
血縁関係にあぐらをかくことなく、
大切な人を愛せているだろうか。
わが子をいますぐ抱きしめたくなった。
*
同時に、
家族というひとつの共同体を超えて、
周りの人たちを、
どれだけ大事にできるか。
やさしい眼差しを、
どれだけ広くもつことができるか。
家族の日々を守ることで精一杯なわたしには、
まだまだ到底追いつけない世界だけれど。
できることから少しずつ。
自分を開いていけたら。
*
ケイト・ブランシェットが、
今年のカンヌの大きなテーマは、
「見えない人々(invisible people)」だったと総括したことも話題になっている。
まさに、見えない人、見えないものに、
目を凝らす時間をくれた、
想像するきっかけをくれた映画だった。
だからこそ、
未だに余韻が長く続いているのかもしれない。
いっしょに映画を観て、
本音で語り合える人がいることのしあわせを感じつつ。