お茶がのめる絵本の店 ティール・グリーン in シード・ヴィレッジへ。
こちらで現在開催されている、
岡本よしろう絵本原画展『生きる』。
そのトークイベントにどうしても参加したかった。
谷川俊太郎さんが40年前に書いた名詩「生きる」に、
画家の岡本よしろうさんが絵を描いた絵本。
詩の言葉に合わせたイメージブックのような作品ではなく、
岡本さんが描いたのは、
海辺の町のとある家族の何気ない夏の一日。
わたしたちが生きる、
ありふれていて尊い”今”をとらえた絵だ。
*
この絵本が出版されたときは、
絵の世界観が意外すぎて、
衝撃を受けた。
でも読むたびに、
ああこれが「生きる」ことなのだと。
そのギャップこそが強いメッセージとなり、
たくさんの人に愛され続けてきた名詩に、
絵本ならではの息が吹き込まれたのだと思う。
子どもたちにとっても、
詩の言葉をより身近に感じられる作品になったのではないだろうか。
*
2011年3月11日に起きた、
東日本大震災がきっかけで生まれたというこの絵本。
子どもたちに、
生きることについて伝えるにはどうしたらいいだろう。
そう考えた福音館書店の自然科学絵本の月刊誌「たくさんのふしぎ」編集者から、
岡本さんに声がかかったとのこと。
「子どもに聞かれたら答えられるくらい、
描く側が明確でないと伝わらない」
そんな編集者の言葉もあって、
岡本さんは、
2人で一緒に詩を読み解くことから始めたそう。
それぞれの章にタイトルをつけたり、
絵の中に様々なしかけを盛り込んだりしながら。
描き続けた15本目くらいのラフが、
いまの絵本の原型になったという。
子どもに対する真摯な姿勢が伝わってくるエピソードの数々に、
何度もこころ打たれた。
表紙に描かれているのは、
ごく普通の団地の絵。
締め切りギリギリで表紙を変更したという理由も、
とても印象深かった。
・・・トークに聴き入りすぎて、
撮影できた写真は一枚のみ。
岡本さん自作のマリオネット、
マリーちゃんのダンスシーン!
お茶目な岡本さんワールドに惹き込まれ、
会場いっぱいにつめかけた参加者のみなさんも大盛り上がり♪
奥様の温子さんとの息の合ったトークも、
とても素敵だった。
岡本さんはご自身のことを、作品に合わせて自然と作風が変わる、
”憑依型”とおっしゃっていた。
確かに、
一人の画家さんが描いているとは思えないくらい、
その表現方法は多彩だ。
それぞれに生き生きと味わいがある。
今回の原画展では、
絵本の全ページ23点が展示され、
細部にわたりじっくり堪能することができた。
夏にぴったりの絵本原画展『生きる』は、
ティール・グリーン in シード・ヴィレッジにて、
7月29日(日)までの開催です。
*
この絵本は、
2017年の「MOE」絵本屋さん大賞で第6位を受賞。
そのときの谷川俊太郎さんの言葉を最後に。
「岡本さんは、
私の書いた詩に寄り添わないことで、
私たちがふだん見過ごしている、
生きることの奥行きを暗示しています。
テキストと絵の関係がこの絵本では<生きて>いるのです。
岡本さんありがとう。」