たった一言でも、心にずしんと響くフレーズがあった本は「買い」だと思います。
公園で読書するのが好きだ。
きっかけは、4〜5年前だと思う。
札幌に住んでいたころ、近所に「円山公園」という、
自然いっぱいで四季折々の表情豊かな公園があった。
休日に少し時間ができたりすると、大好きなその公園に、
一冊の本を持って、ぶらりと出かけていった。
ベンチに座って読書しながら、
紅茶を飲んだり、木漏れ日を感じたり、
目をつむって、木々の葉っぱのざわめきを聴いたり、
そうこうしているうちに、居眠りしてしまったり 、
ときには、公園で出逢った子どもたちと栗拾いをしたり(笑)。
ささやかでも自然にふれることは、私のストレス解消法の一つだ。
慌ただしい毎日に没頭し過ぎて、情報過多になってくると、
自分のこころがついてゆかなくなって、呼吸が浅くなってくる。
休みなさいのサイン。
ぶるるんと心にエンジンをかけてまた走り出すには、「深呼吸」が必要だ。
きょう、公園でいっぱい深呼吸をしながら、読み終わった本はこれ。
『困ってるひと』大野更紗 著。
ほぼ前例のない原因不明の難病を発症した、
大学院生女子の冒険、恋、闘いを記録した、心震えるノンフィクション。
すでに11万部突破しているとかで、話題になっている一冊だ。
この本、すごく読みやすいだけでなく、衝撃的に面白かった。
ジェットコースターに乗っているかのようにぶんぶん脳内を揺さぶられ、
本を閉じたあとは、しばし放心。 。
きょう生きるか死ぬかという、常にぎりぎりの病態は凄絶過ぎるし、
現行の社会制度とのバトルも丁寧に描かれ、考えさせられることも多かった。
内容はとてもヘビーだけど、自らに降りかかった悲劇を、
溢れんばかりの知性とユーモアで笑い飛ばす文章力は圧巻。
いや、笑いを隠れ蓑にして、生きることの苦難と喜びを力強く発信しているのだ。
そして、『当事者にしかわからない』という、
至極当たり前だけど忘れがちなことを、改めて気づかせてくれた。
それは、人と人とのつながりを否定したり拒否するものではなく、
生きる上での覚悟と、人間関係上のマナーという意味で。
結局、その人の人生はその人にしか生きられない。 他の誰でもなく。
誰かが言うごちゃごちゃは、誰かの都合でしかない。
道なき道こそ、自分で一歩踏み出すしかないのだ。
命がけのユーモアから、沢山のことを受けとった。
もちろん、生死に関わっていなくても、
多少なりとも、様々な問題に「困ってるひと」におすすめです。